地面の着き方でマラソンは速くなる!? ランニングの極意
タイムを伸ばすにはどうすれば良いか。世界中のスポーツ医学で研究が進んでいる。
近年では体力の指標(酸素摂取量)よりも、ランニングエコノミーをあげることがタイムをあげることがより重要だと言われている。
ランニングエコノミーについてはこちら↓
・これまでランニングエコノミーは遺伝的に備わった能力だと思われていた。それが近年はトレーニングですることで改善することが明らかとなっている。
ランニングエコノミーは様々な要因で変化する。その1つがランニングフォームだ。
まずランニングフォームはこのような周期で分けることができる。
中で注目すべきポイントが、足趾離地期。つまり足が地面から離れるポイントのことだ。どうやって足が離れるかによって、タイムが変化するのだ。
そう提言したのは、イギリスのエクセター大学のIsabelである。
今回はIsabelの論文をもとに速くなるフォームについて考えてみよう。
Isabelの研究
Isabelらは20-30代のランニング初心者を集めて10週間の間ランニングトレーニングを行った。その結果、ランナーたちはランニングエコノミーの向上に成功。グラフに示すように、同じスピードのランニングを少ないエネルギーで走ることができるようになった。
つまり言い換えると、酸素の消費量を抑えて、無駄に体力を消費しない方法を身につけたのだ。
筆者編集
ではここで、どうしてランナーたちはランニングエコノミーが改善したのか気になるところである。足が地面から離れるポイントに着目するとIsabelは面白い変化に気づいたのだ。
足が地面から離れるとき、トレーニング前は膝と足首が伸びきっていたのに、
10週間のトレーニングをした後、ランナーたちの膝と足首の角度に変化があったのだ。
左の図がトレーニング前で右の図が10週後である。この図を見ると、膝と足首が少し角度が減っている。つまり足首ランニングエコノミーが改善したランナーたちの膝と足首は少し屈曲するように、地面から足を離していたのだ。この変化がランニングエコノミーの改善に寄与しているとIsabelは考えた。
てっきり、足先に力を入れて離す直前に、地面を蹴った方が、勢いづいて速く走れそうに思えるのだが。実際はそうではなかった。
ではなぜ、この変化が改善に寄与したのだろうか。
Isabelは、膝と足首を少し曲げることでランニングエコノミーが改善した理由に次の2つを挙げている。1つ目は、膝と足首の動きが減り、消費エネルギーが減る。2つ目に推進力が向上する。というのだ。
ただそんな簡単にフォームを変えるだけで、タイムが速くなるのだろうか。
実際、プロのマラソン選手でも、フォームは人それぞれ異なるし、個人個人にあったフォームが存在するはずである。もっとも、蹴り上げながら走った方が速く走れると思う人だっているかもしれない。
しかし、今回Isabelが辿り着いた結果は、他の研究者でも同様の見解が述べられている。
つまり、膝と足首を少し曲げておくことは多くの研究者で強く支持されている数少ない見解なのである。(参考文献をご参考ください)
ただ練習をしても速くはならない。フォームを意識して頭を使いながら練習することでマラソンは早くなる。マラソンタイムを速くしたい方の参考になれば幸いだ。
参考文献
Moore IS, Jones AM, Dixon SJ. The pursuit of improved run-ning performance: can changes in cushioning and somatosen- sory feedback influence running economy and injury risk? Footwear Sci. 2014;6:1–11.
Hausswirth C, Bigard AX, Guezennec CY. Relationships between running mechanics and energy cost of running at the end of a triathlon and a marathon. Int J Sports Med. 1997;18:330–9.