真咲輝司 Rehabiri knock

大学病院で勤務する理学療法士

カフェインを摂ると足が速くなる?

カフェインの摂取が運動時に有益な効果が現れています。

 

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Clarkeらはカフェイン3mg/kgの量が含まれたがコーヒーと、カフェインが含まれていないコーヒーをそれぞれ摂取させて、違いを比べたところカフェイン入りコーヒーを飲んだ時の方が、1.3-1.9%ほどランニングタイムが速くなったという報告も行いました。

 

他にも、Grahamらは150-300mgのカフェインと摂取しトレッドミルで測定したところ1500mのタイムが1.45%速くなるとの報告も出ています。

  

ではなぜ、カフェインの摂取によってランニングスピードに寄与するのでしょうか。

 

 

カフェインの作用

筋肉を収縮するためには、筋小胞体から出るカルシウムが作用します。しかし、カルシウム濃度が上がると筋肉を過収縮させてしまいます。カフェインには、この過収縮を防ぎ、筋肉をリラクゼーションする働きがあります。(Gold stein 2010)

 

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図 筆者作成

 

 筋小胞体はカルシウムポンプを持ち、能動的にカルシウムイオンを取り込んでいます。

筋細胞に興奮が起こると、筋小胞体はカルシウムイオンを細胞質に放出します。

 

アクチンフィラメントはトロポニンやトロポミオシンという調整蛋白を含んでいます。

 

ミオシンフィラメントは架け橋を構成し、収縮に際してA TPを分解しエネルギーを供給します。

 

カルシウムイオンの濃度が増加し、カルシウムイオンとトロポニンが結合すると、アクチンフィラメントから離れ位置を変えてA TPを分解すると、そこでアクチンフィラメントと結合し、元の位置に戻ります。この運動の繰り返しによって筋肉の収縮は起こります。

 

カルシウムイオンがアクチンフィラメントのトロポニンと結合して、骨格筋の収縮を制御しているので、これをアクチン関連制御と言います。

 

カフェインはこのアクチン関連制御に関与し、筋肉の過収縮を防ぎ、エネルギーを節約する働きがあるのです。

 

 

また、有酸素運動時にアデノシン受容体の拮抗作用が働き、痛みや疲労感を減らす効果があると報告されています。これをエルゴジェニック効果といいます。(Davis 2009)

 

これらのことから、自覚的な疲労感を減らし、ランニングスピードを上げることができると言われています。

 

 

そのため、Collompはカフェインを摂取することで、短距離走のスピードが速くなる可能性を示されているのです。

 

カフェインの量

では具体的にどの程度の量が効果的なのでしょうか。

 

2週間の運動においてFerreiraは(5mg/kg)のカフェインを運動前に摂取した効果を検討しました。その結果、選手たちの筋肉へのダメージが減少することが明らかとなりました。

 

またさらに炭水化物のみの摂取している選手と比較して、炭水化物+カフェインを摂取している選手の方が、エネルギー キャパシティーが増大することを示しました。(Taylor 2011)

 

そんな中、よりカフェインの摂取量を増やした方が、得られる効果も高いのではないかと考えた方々がいました。

 

Pedersenらはこれまでよりも多い8mg/kgのカフェインを運動前に摂取しました。

その結果、新たな効果が明らかとなりました。

 

その研究によるとグリコーゲンの使用を出来る限り最小限に抑えて、さらにミトコンドリア活動も増加することが示されたのです。

 

 

つまり、H I ITのパフォーマンス能力にも影響することが示唆されたのです。

また、近年はカフェインと他の栄養素を組み合わせたマルチサプリメントについても注目を集めています。

 

 

Fukudaらは、カフェインにクレアチンとアミノ酸を組み合わせたことで、ランニングタイムにも効果が現れることを示したのです。

 

しかしまだ、これまでにランニングスピードとカフェインの関係を実際に計測した研究は多くありません。

 

Alexandreらはカフェインの摂取(5mg/kg)の有無で800mのタイムに差が出るか検討しましたが、明らかな差は生じませんでした。

 

もしかすると、カフェインの摂取に加えてアミノ酸などのマルチサプリメントでの介入を行えば、効果が出る可能性があるかもしれませんね。


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