真咲輝司 Rehabiri knock

大学病院で勤務する理学療法士

高負荷インターバルトレーニングの安全性・有効性

心大血管疾患を有する患者さんに対して行う運動療法(以下:心臓リハ)を実施することで、運動耐用能の改善や、生活の質(以下QOL)の向上に寄与するとされています。またtarorらによると、1年間心臓リハを実施することで再入院率の低下、死亡率の低下にも寄与すると報告しております。

 

 

高負荷インターバルトレーニングについて

これまでの心臓リハは有酸素運動が中心です。無酸素性作業閾値(以下:AT)を超えないように自覚的にややきつい程度の軽めの運動負荷をかけていきます。

 

しかし、いまだにトレーニングの方法や、運動強度については明確なものはなく、まだまだ議論する必要があります。近年では、心不全患者に対してA Tを超えるような高負荷なインターバルトレーニングが有効との報告も上がっています。

 

しかし心不全を呈した患者さんにとって高負荷な運動を行うことは、カテコラミンの増大に伴い不整脈を誘発したり、1回心拍出量を低下させる等の有害事象も報告されています。

 

 先行研究では、高負荷な運動は心不全が代償化してから実施する1〜3ヶ月後に開始することを推奨する報告は上がっていますが(Wisløff U 2007)、入院早期から運動療法を実施することを推奨した報告はあまり上がっていません。

 

そこでこの疑問に答えるためにArtemらは、入院早期からの高負荷での運動療法についての効果を明らかにしようとしました。高負荷インターバルトレーニングの方法は以下の通りです。

 

高負荷インターバルトレーニング群は

3分のウォームアップ後、20秒間peal VO2 の50% →40秒間10Wでの休憩を繰り返す。

トレーニング時間は

10min組 peakVO2 <10ml/kg

15min組 peakVO2 10-14ml/kg

20min組 peakVO2 14ml/kg<

 

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その結果、心不全入院後早期(9.4日±3.7)から高負荷インターバルトレーニングを3週間実施することで運動耐用能を示すpeak VO2は17%増加することが示されたのです。

 

さらに高負荷インターバルトレーニング群において心不全患者のQOLを評価するミネソタ心不全質問表(以下:MLHFQ)でも有意にQOLが改善することが明らかとなったのです。

 

 

これらのことからArtemらは、心不全入院早期から高負荷インターバルトレーニングの実施が安全かつ運動耐用能の改善、Q O Lの改善に効果的であることを明らかにしました。

 

 

しかし、今回は、重度弁膜症、最近発症した心筋梗塞イベント、C R T植え込み等の並存疾患を有する患者さんについては研究から除外されており、比較的合併症の少ない患者さんが対象となっています。今後は、そのような重症の方についても高負荷インターバルトレーニングの有効性を明らかにしていく必要があります。

 

高負荷インターバルトレーニングで心機能が改善する?

 また近年では、高負荷インターバルトレーニングを実施することで心機能を改善するとの報告が上がっています。

 

Wisloffらは、12Weekの高負荷インターバルトレーニングの介入にて、

左室拡張終(末)期容積が12%減少し、左室収縮終(末)期容積15%減少し、左室駆出分画(率)LVEFは37%増加したとの極めて興味深い結果を示しました。同様にE Fが改善した結果が、他にも報告されています(Erbs S 2010)

 

今後はLVEFをはじめとした高強度インターバルトレーニングが心機能を改善させる要因についてもまとめていきたいと思います。

 

 

1 Artem D,Denis et al. Interval training early after heart failure decompensation is safe and improves exercisetolerance and quality of life in selected patients,European Sosiety of Cardiology 2018

2 Taylor RS, Sagar VA, Davies EJ, et al. Exercise-based rehabilitation for heart failure. Cochrane Database Syst Rev 2014; 4: CD003331.

3 Wisløff U, Støylen A, Loennechen JP, et al. Superior cardiovascular effect of aerobic interval training versus moderate continuous training in heart failure patients: A randomized study. Circulation 2007; 115: 3086–3094.

4 Meyer K, Schwaibold M, Westbrook S, et al. Effects of short-term exercise training and activity restriction on functional capacity in patients with severe chronic con- gestive heart failure. Am J Cardiol 1996; 78: 1017–1022.

5 Erbs S, Ho ̈ llriegel R, Linke A, et al. Exercise training in patients with advanced chronic heart failure (NYHA IIIb) promotes restoration of peripheral vasomotor func- tion, induction of endogenous regeneration, and improvement of left ventricular function. Circ Heart  Fail 2010; 3: 486–494.

6 Acanfora D, Scicchitano P, Casucci G, et al. Exercise training effects on elderly and middle-age patients with chronic heart failure after acute decompensation: A ran- domized, controlled trial. Int J Cardiol 2016; 225: 313–323.

7 Smart N, Haluska B, Jeffries L, et al. Exercise training in systolic and diastolic dysfunction: Effects on cardiac function, functional capacity, and quality of life. Am Heart J 2007; 153: 530–536.